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ウィスキーの年数表記を正しく知るためには、製造工程とウィスキーの目的を押さえておかなければなりません。まず始めに、ウィスキーができるまでの4つのプロセスについて紹介します。
ウィスキーの原料は麦芽です。最初の工程では乾燥させた麦芽を粉々にし、そこに水を加えてでんぷんを糖類に変換します。糖類ができたら発酵の工程に移りますが、発酵は味わいに大きく影響するため、慎重に行わなくてはなりません。水の影響も大きいため醸造所の立地も大切です。
また、発酵に使用するのは酒母です。エタノールと炭酸ガスに分解していきます。この工程でウィスキー独特の香りが出るようになります。発酵させるときの条件、使用する酒母などによって香りが変わってくるため、メーカーのオリジナリティにつながっていることも。発酵させる時間はメーカーにもよりますが、サントリーはおよそ60時間発酵させています。
アルコールの発酵が終わった段階で、ひとまずお酒にはなっていると言えます。しかし、この段階でのアルコール度数は7%ほどしかなく、とてもウィスキーと呼べるものではありません。私たちが知っているウィスキーになるためには、蒸留のプロセスが必要となります。
これは原酒を作るための工程で、アルコールの揮発性を利用します。連続式蒸留や単式蒸留などの種類があり、採用する方法によってできあがるウィスキーが変わります。また、蒸留させる回数によっても完成品の味や香りが異なります。この工程によって、アルコール濃度は約70%まで濃縮されます。
蒸留によってできあがった原酒はニューポットと呼ばれます。これを樽の中に詰めて寝かせることを貯蔵・熟成と言います。完成品の色や味わいに深く関わってくる工程で、長期間じっくりと寝かせます。熟成に使用する樽も多種多様で、使われている素材や大きさ、内面の焼き方などがそれぞれ仕上がりが異なります。代表的な樽材だとミズナラやホワイトオーク、スパニッシュオークなどが挙げられます。貯蔵期間はもちろんですが、湿度や気温など環境によって味や香りが変化するのも面白いところでしょう。さまざまな要素が複雑に絡み合うことで、多彩な原酒が誕生します。
熟成させた原酒は、すべてが同じ味や香りではありません。たとえ、まったく同じ樽、同じ条件で熟成させたとしても、微妙に味が異なります。これだと、商品として販売できないため、味や香りを均一化する工程が必要となり、それがブレンドです。そのため、さまざまな樽の原酒をブレンダーと呼ばれる職人が慎重に混ぜ合わせ、ようやく商品が仕上がります。こうして仕上がったものがボトルに詰められ、商品として出荷されていきます。ただし、シングルモルトウィスキーは1種類の原酒のみで作られているので、ロットごとに味わいが変わります。
一般的なウィスキーは味を統一するため、いくつもの熟成させた原酒を混ぜ合わせて完成させます。しかし、15年と表記された商品だと、15年ものの原酒のみを混ぜて作られているのかと言うと、そうではありません。
まず、ウィスキーは商品として完成するためは、さまざまな年の原酒がブレンドされています。では、15年という数字はいったい何なのかと言うと、これは「ブレンドに使用した原酒の中でもっとも熟成期間が短いものの年数」を示しています。つまり、もっとも熟成期間が短いものが15年のもので、実際はそれ以上の年数熟成させた原酒が混ざっています。最終的な目的は味を統一させることにあるので、熟成年数がかなりかけ離れたものを混ぜることになるのです。
熟成年数が長いほどおいしくなるかと言うと、決してそうではありません。10年ものと20年ものだと倍の期間差がありますが、香りや味わいが劇的に良くなることはないのです。確かに、熟成が短期だと、長期ものに比べて円熟味が薄く香りの奥深さもそこまでありません。ただ、味や香りの熟成度が低いため、ジュースや氷と上手に溶け合って飲みやすくなります。多彩な香りの変化を楽しめるのも特徴と言えるでしょう。
長期のものは、味や香りが強い点が特徴です。ただ、氷や水、ジュースなどを加えてしまうと本来の香りが損なわれてしまうため、飲み方が限られてくるデメリットがあります。長期熟成ウィスキー本来の味わいを楽しむためには、ストレートやトワイスアップといった飲み方が基本となります。熟成の長短それぞれに魅力があり、どちらが良いかは甲乙つけがたいと言えます。しかし年数が長ければ管理コストがかかり、希少性が高くなることから高価になる傾向があります。
より若い年数の原酒を混ぜ合わせて作られたものを、ノンエイジウィスキーと呼びます。ブレンドを行うブレンダーが、もっとも良いと感じた原酒を混ぜて作っていることが大きな特徴です。ブレンダーの考えやオリジナリティが反映されるため、個性的な商品になることも少なくありません。
ウィスキーの製造プロセスや年数について知ると、今までとは違った楽しみ方もできるようになるでしょう。最後にご紹介したノンエイジウィスキーも、機会があればぜひ試してください。
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