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「三度注ぎ」と呼ばれるビールの注ぎ方を耳にしたことはあるでしょうか。三度注ぎとは、その名のとおりビールを三回に分けてグラスに注ぐ方法のことです。ビールは注ぎ方によって味が大きく変わると言われていますが、この三度注ぎを行うと、同じビールとは思えないほど格段においしくなります。
もともと、ビールで有名なドイツやチェコでは、ビールを泡立てながら、時間をかけてグラスに注いでいくのが風習でした。2012年、チェコのブドバー社が、三度注ぎによってビールがおいしくなるという研究結果を発表しました。しかしこれは人間の五感を使った官能評価によるもので、これまで化学的な証明はなされていませんでした。
その後、化学的な視点から三度注ぎについて研究したのが、キリン株式会社です。「三度注ぎ」と一度注ぎである「泡なし」の2種類の注ぎ方のビールを用いて、成分変化の比較実験を行いました。その結果、おいしさの秘密が化学的に明らかになったのです。
まず一つめの理由が、「香気成分を閉じ込めることができる」点です。注いだ直後は、「三度注ぎ」よりも「泡なし」の方が香りを強く感じるのですが、時間が経過するとこれが逆転します。「三度注ぎ」の1度目は後述のとおりしっかり泡立て注ぐのですが、それによって泡が蓋の役割を担い、香りが長く続くようになります。
そして二つめの理由は「苦味成分が変化すること」です。ビールには、本体の「苦味成分」と苦味を緩和させ奥行きを与える「後味成分」が存在します。「苦味成分」は泡と親和性が高く、「後味成分」は液体になじみやすい性質を持っています。飲んでいくにつれて泡と液体の割合が変わっていくため、飲み始めと飲み終わりでは異なる味わいを楽しむことができるのです。
三度注ぎというひと手間で、ビールは抜群においしくなります!ここからは、具体的な三度注ぎの手順についてご説明します。
グラスを置いて、できるだけ高いところからビールを注ぎます。初めはゆっくりと、次第に勢いをつけて泡立て、グラスを泡で満たします。
泡とビールの割合が同程度になったら、2回目を注ぎます。このとき、グラスの縁から注ぎ、泡がグラスから1cmほどはみ出したところでストップします。
泡が、グラスの縁を下回らないよう静かに注ぎます。泡がグラスより1~2cmほど盛り上がるように注ぎ入れれば完成です。
三度注ぎ以外にも、缶ビールをおいしく飲むためのポイントがあります。これらを実践すれば、お店で味わうようなクオリティを自宅で再現することも可能ですよ。
まずは、グラス選びにこだわってみてください。ビールグラスは、背が低いものだと泡立ちにくく、高いものは泡が立ちすぎてしまいます。一般的なビールの場合、ビールグラスの口径と高さが1:2のものが、最もおいしさを感じやすいと言われています。
さらに、グラスの厚さによっても味わいは変化します。味よりものど越し重視派には厚みがあるもの、味わいを楽しむなら薄いものがおすすめです。飲み口は、広いものなら香りが、狭いものなら新鮮さが長続きすると言われています。好みに合わせて選んでください。
グラスは汚れが残らないよう、きれいに洗うことが大切です。特に油分はビールの泡にとって大敵で、すぐに消えてしまう原因になります。油汚れのついたスポンジで洗うと、グラスに油が残ってしまうことも。可能であれば、グラス専用のスポンジを用意するのが望ましいと言えます。また洗浄後は、布巾などで拭かず、逆さにして自然乾燥させましょう。こうすれば手の脂が付着しないため、きれいなグラスを保ちやすくなります。
ビールは冷やしすぎに注意してください。ビールの飲み頃は5~8℃で、夏なら低め、冬なら高めの温度に設定しておくと良いでしょう。冷蔵庫で4時間ほど冷やすのが目安です。冷凍庫でキンキンに冷やすのが好み、という人もいるかもしれませんが、ビールは3℃以下になると泡立ちが悪くなるほか、香りもわかりにくくなってしまうことがあります。
ビールはとても繊細で、その鮮度はおいしさに大きく影響します。缶の底に印字されている製造日を確認して、なるべく新しいものを選びましょう。できれば1か月以内、長くても2か月以内のものにするのがおすすめです。
缶ビールでも、注ぎ方をひと工夫するだけで格別な味わいになります。自分で飲むときはもちろん、友人を自宅に招く際にも、ぜひこの方法でもてなしてみてください。きっと喜ばれるはずですよ。三度注ぎに加えて、ビールの温度やグラスにも妥協せず、ぜひこだわってみてください。ビールのおいしさを余すことなく引き出して、宅飲みを楽しみましょう!
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